パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

52 この気持ちは何!?

1年目の思い出 52

重い荷物を持った、おじいさんが地下鉄の階段前で困っていたので、手伝いましょうか?荷物を持ちますよと声をかけた時のお話。

パリの地下鉄の無賃乗車

誠意もきっと裏切られる

 おじいさん、無言で僕に体をドンとぶつけて、僕が定期券で開けた改札に無理やり入ろうと、後ろからグイグイ圧をかけてくる。なんとか二人が一つの定期券で改札を通過したあと、彼はそのまま何も言わず、僕を追い越して行った。その後ろ姿を見ながら、なにか瞬時に消化出来ない感情に襲われる。

 別にこちらに何か被害があったわけじゃないし、このやり口の無賃乗車なんてパリでは当たり前に行われてるので特に驚くことでもないんだが、なんだかものすごく悔しいような、裏切られたような、悲しいような気分になるのは、お伽話の筋では、かわいそうなおじいさんは正直者で、金の斧でも銀の斧でもなく鉄の斧を選ぶし、欲がなくて、大きいつづらじゃなくて小さなつづらを選ぶもんだと思ってたのに、無賃乗車するわ、ありがとうも言わないわ、僕の中の「かわいそうなおじいさん」を打ち壊されたせいだと思う。

 日本じゃ結構、その筋をなぞるご老人が多く、必要以上に感謝されたりして、ぬくぬくとお伽話のイメージを背負わせてきたが、フランスに住み始めて早々に現実を突きつけられた。「この、かわいそうなじいさん、大きいつづらも小さいつづらも持っていったー泣」って穴のネズミもびっくりしてるだろう。

 でも、なんていうか、自分も結構反省するっていうか、勝手にそのおじいさんをお伽話の世界にはめこんで、重い荷物を運んでたっていうだけで、「かわいそうなおじいさん」だなんて思ったりして。