パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

55 映画の力、アルドリッチの魅力

1年目の思い出 55

友人と夜の街を歩いていると、酔っ払いが絡んできたので無視して通りすぎると、後ろから僕の肩を掴んできた。普段、怒ったりしない、大和撫子入ってる僕がなぜかその時、頭に血が上り、離せっと声を荒げて酔っ払いと向き合うことになった。

アルドリッチの遺作カルフォルニアドールズ

映画の主人公になりきる

 怒ってはみたものの、話の通じない相手にどう表現していいか分からず、間があいたすきに友人が僕の腕を掴んで酔っ払いから引き離した。どんどん距離がつき5mぐらい先で、ふと脳裏に浮かんだ、ロバート・アルドリッチ監督【カルフォルニア・ドールズ】の主人公女子プロレスラーが映画中よくやる、相手を挑発するジェスチャー、腕をクロスさせ、片腕を上にあげるそれが、この状況にもっとも適したものだと判断し、まだ向こうで訳の分からないことを叫ぶ酔っ払いに「黙れ、馬鹿野郎、くだばれ」と言いながら、そのポーズで答える僕には、女子プロレスラーのモリーとアイリスが、そしてアルドリッチ監督とその映画が宿っていたと思う。

 しかし、このジェスチャー、あまり見たことないんだが、アメリカでは日常よくするもんなんだろうか?調べると、イタリアでは有名みたいだけど。中指を立てる、よくある挑発サインでは、あのプロレスシーンの優雅な動きが最高にかっこいいこの映画では弱すぎるし、格好がつかない。この映画にはあの動きこそが正解。よく見るジェスチャーをさせるのが映画的には正しいとは限らないのが映画の難しさ。あえてあのジェスチャーを採用したアルドリッチの凄さったらない。

 そんな名作に裏打ちされた僕のジェスチャーに腹が立ったのか、酔っ払い、なおも叫び散らし、通行人が彼を煙たそうに見ている中、彼は、「ポリスを呼べー」って周囲に喚き始めた。僕の近くの二人組が、振り返り彼を見て、「ポリス呼んで捕まるのお前じゃん。」ってぼそっと言い合ったのを含めてすごく映画的でアルドリッチ的。意表をつく酔っ払いの言葉だが、きっとそれが映画的にアルドリッチ的に正しいんだろう。

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