パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

56 おじいさんの思い出をめぐる旅

一年目の思い出 56

イスラエル人のおじいさんにエクスキュズミーと声をかけられ、レストランの名前と住所が書かれた紙を見せられた。どうやらこの住所のレストランに行きたいらしい。暇だったので、携帯電話でマップを見ながら、そこまで案内することにした。

もう一度同じ場所に行く

昔の思い出を巡る旅

世界は動き続ける。記憶さえも変わる

 おじいさんと別れてすぐは、旅の出鼻を挫かれた彼が不憫で、こちらもすごく残念な気持ちになったが、きっとおじいさん、この旅はきっと本来の目的とは違うものになったけれど、前とは別の、新しい体験をしてくれてるんじゃないか。と思い込み、新しいレストランでの思い出が過去の思い出に重なり合うのなら、きっと旅の意義があったはず。という願いを込めて、マンガにしてみた。一回きりの旅じゃ味わえなった気持ちや、一度目があるからこそ、二度目で得られる喜びってのがきっとあるはず。

 思い出を巡る旅と聞くと、すごく後ろ向きで、悲しさを連想するのは、記憶している世界と今の世界がすっかり変わっていて、失われたものを数えるだけの旅と考えるからだと思う。だけど世界は変わっていくんである。最近になって本当によく思う。ノートルダム大聖堂だって燃えるのだから、店の一つや二つなくなったってなんの不思議もない。街も変わるし、人の様子も変わっていくのが世の常って言うし。

 ただ、自分の記憶だってもちろん変化していくわけで、失われた世界だからこそ出来る楽しい幸せな思い出を前回の記憶に上書きすることが、世界の変化への一つの健全な向き合い方だ思うし、自分はそっちの考えで生きていきたい派。嫌なんですよ、じめっとした気分になるの。カラッとね、カラッとサクッと生きてたい。おいしい唐揚げみたいになりたい。