18 旧友の謎の嗜好

フランス人と行く日本旅行 18

大学時代の友人と会って食事するけど、来る？とピエールを誘うと、もちろん行くというので、友人たちに紹介することになった。挨拶を済ませてすぐ、友人の一人が、どうしてもピエールに食べさせたいものがあると譲らないので、まだ夜も早いので彼について行くことにした。

　意気揚々とここ！と指差した先にはコーヒー一杯２１０円の大衆カフェ・ベローチェ。なぜ、わざわざここ？と疑問に思いながら、注文カウンターから戻ってきた彼のトレーにはコーヒーゼリー４人前が乗っててさらになぜ？疑問だらけ。

　そりゃ、ベローチェのコーヒーゼリーがおいしいのは知ってるし、安いし、フランスにはないんだけど、数ある、日本的なスイーツの中でコーヒーゼリーって決して日本らしさを感じさせるものでもないし、抹茶パフェなんかに比べると明らかに華がない中、堂々とコーヒーゼリーを差し出すって、よほどの思い入れがないとあり得ないと思うんだが、どうなんだろう？

　大学時代、週三回は必ず会ってた日々には、コーヒーゼリーのことなんか口にしたこともない彼。いろんなことを聞いてきたし、話したとも思う程の仲でも、コーヒーゼリーに目が無いってことは隠してたのか。それとも頻繁に会うことがなくなった日々に、人知れずコーヒーゼリーの魅力に取り憑かれたのか。いくら古くからの友人でも知らないことだらけ。