パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

47 パリのトイレ【日曜深夜の出来事】

1年目の思い出 47   ◯◯◯◯事情

フランス生活一年目、友人と日曜日の深夜、何気なく家の周りを散歩していたら、突然、お腹が痛くなった。今まで歩いて15分の距離。カフェを探すが、日曜の深夜はどこも閉まっていて、公衆トイレも締め切られていた。

パリの公衆トイレの注意点

パリでトイレを探しまくる

 座り込んで、来る波に耐え抜いて、波が過ぎ去るのを見て、次の波が来るまで、できるだけ上体を揺すらないよう、すり足気味の早足で、まるで能の演者が競歩をしてるかのような、しかも顔はただ前だけを見据えて歯をくいしばり必死の形相で自宅への道を急ぐ姿は深夜の街灯の下でやるにはあまりにも不気味だったろうと思う。

 一定の間隔である公衆トイレも、すべて、犯罪防止のために閉め切られていて、その都度、絶望を味わい、うずくまって波が去るのを辛抱するしかなかった。そんな極限の状態で、友人が「向こうにトイレがあるぞ」と指差した先は不法投棄された便器で、「ほら、これにしちゃえ!」と笑いながらそう言った時、俺の足は波に持っていかれそうになり、最大の踏ん張りを強いられることになった。

 どうか無事であってくれと祈り、手を固く握り締めながら、波が去るのをひたすらしゃがみこんで耐え、「ちょうどいいとこに便器あるじゃん、何でやねん!」と一人突っ込んだ結果、こみ上げてくる笑いと戦うことの辛さと言うのは筆舌に尽くしがたいものがある。

 波が静まってから、「お前は一番やってはいけないことをしたんだぞ」と久しぶりに本気で怒りをぶつけたが、不法投棄され無様に立つトイレの姿が頭にちらつき面白くて、怒ってるんだか、笑ってるんだか、泣いてるんだか、訳が分からなくなった思い出。

 結局、自宅まで何とか我慢仕切り、ことなきを得た。しかし、パリの便器の不法投棄は一体何なんだろう。