32 赤いコートの謎
1年目の思い出 32
語学学校の半期の授業が終わり、4ヶ月半勉強を共にしてきたクラスメートともお別れの時。
一番仲良くしてもらった台湾人のユンとも別れなきゃいけない。
同じように全くの初心者同士、辛酸を嘗めた仲なので、想いはひとしお。最後のランチはさぞかし感動と思いきや。
当初に比べれば、本当にお互いフランス語が上達した。気づかないうちに、毎回、ご飯を食べるたび、少しずつ、少しずつ話せる内容が増えてきたように思うけど、やはり四ヶ月の勉強じゃあ限界があった。
もう、5月、まだまだ肌寒い日はあるけれどその日は暖かく、コートを着てる人などいなかったし、少し変だと思って、習いたての『なぜ?pourquoi』の文章で聞いてはみたが、一生懸命説明してくれる彼女の言ってることがさっぱりわからなかった。
お互いの語学力不足の現実を完全に突き付けられた中でお別れすることになったのは不本意ではあるけれど、未だに強烈に印象に残っているし、これからも、ずっとこの『赤いコートの謎』は僕の中で残り続けるのだから面白い。ユンはなぜ、赤いコートを暑い中着てたんだろう。。