パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

09 隣の男

フランス人と行く日本旅行 09

飛行機のチェックインが遅れたせいか、真ん中の中央の出来れば避けたい席をあてがわれた上に隣の座席のおっさんが、こちら側の座席まで肩や腕を預けてくるのに、イライラしていた。

中国人だらけの乗客

 男も愛嬌って大事

 イライラして、ちょっと一言、二言文句をつけようとした瞬間、不意に話しかけられた。パリに旅行して上海の家に帰る途中っていう彼は、日本にも何度も行ったことがあって、日本料理が好きだという話を延々としてくるが、聞いててなんだか気まずいということもなければ、ひたすら自分のことを面白おかしく喋り続ける彼に、共感すら湧いてくる。そうなれば、向こうのペースで、多少の嫌にも情が邪魔して可愛く思えてくるんだわ。きっと、天然にこういうことをやってきた人で、人から好かれてきた人なんだろうと思う。

 こっちが今までそれなりに気を使って自分なりに慎重に生きてきた中で得てきた他人からの共感の総数など、彼にかかればものの1ヶ月で超えられるに違いないと思う。きっと、今までもこれからもこの調子でやっていくんだろう、人生さぞ楽しいだろうと感心してるとスルメを食べ出して、匂いが座席まわりに充満し、さすがにオイオイと思うが、食べる?と勧める彼の無邪気さにノーサンキューと笑ってその臭さすら許してしまう僕に、向こう側の座席に座るフランス人のご夫婦が蔑むよう視線を送り、ため息を漏すのを見て、俺じゃないと心で叫び、こいつこいつ!と振り返った彼はひたすらスルメを噛みながら派手なアクション映画を見ているという、社会の縮図がそこにあった。