パリ漫!ソレコマール

30歳超えて衝動的にフランスのパリに住み始めました。

20 外国人としてのたしなみ

フランス人と行く日本旅行 20

箸をうまく使いこなせないピエール。箸の持ち方はうまいが、細かいものを持とうとしてもなかなか口まで運べない。

箸の使い方がうまいフランス人

外国人ぶる外国人

 店員にフォークを頼もうと提案しても、「皆んなみたいに箸を使う」と言って聞かないピエールに、僕たち母性を刺激されて、まるで我が子の挑戦に口を挟みたい気持ちを押し殺してハラハラ見守るかのごとく、彼に熱い視線を注ぐ。途中で箸から食べ物が転げ落ちても「あーっ!惜しい」って励まして、うまく口まで運べるものなら、拍手して煽てる状況に、ふと、『あれ?こいつ、もしかしてわざとやってるんじゃないか?』という自分の中の黒い部分がささやくと、もうそうとしか思えなくなった。

 相変わらず、煽て励ましを繰り返す友人たちに、満足げなピエール。普段なら彼、短気なのでイライラして箸を放り投げるか、【ピュータン】という汚い言葉をまき散らかすのを知ってるだけに、出来ないことに対していらつかず、てへっとした表情でおどけてみせる余裕があるってことは、そういうことで、はじめこそは『くそー外国人という立場を利用してチヤホヤされやがって』と憤った。

 だけど、僕だって、カフェで偶然出会ったおじいさんが、面白がって日本から来たという僕にアニスという結構クセのある味のお酒を一杯ご馳走してくれた時、オーバーに不味そうなリアクションをしたし、エスカルゴを勧められて、初めて食べますとカマトトぶったのは、おじいさんの外国人がするリアクションへの期待に答えるためだったじゃないか。

 きっとピエール、僕らが期待する箸の下手くそな外国人としての役割をうまく演じて、こちらにサービスしてくれてたんだろう。外国人でいるって大変よな。